私は、金融包摂を通じて女性のエンパワメントを推進する五常の取り組みに関心を持ち、インターンとして働き始めました。そんな中、五常の活動とは別の機会ではありましたが、2026年3月にバングラデシュにある女子大学での2週間の交換留学プログラムに参加しました。この大学はバングラデシュ国内だけではなくアジアや中東などの紛争地域で社会的に困難な状況にある女性に高等教育の機会を提供するために設立されました。そこで出会った一人の友人の物語が、女性の経済的自立が持つ力と、教育の可能性について深く考えるきっかけになりました。このブログでは、彼女の物語を紹介したいと思います。


ナーゲスはアフガニスタン出身の、20歳の女性です。タリバン政権の影響により国内では女性が大学に通うことができず、彼女は家族と離れ、命の危険すら伴う状況の中でバングラデシュに渡り、学び続けています。

そんな彼女が語ってくれたのは、自分の家族の話でした。彼女の母親はとても若い頃に結婚し、それ以来ずっと夫に経済的に依存して生きてきました。仕事をしていないため収入はなく、生活のすべてを夫に頼るしかない状態です。このような関係の中では一般的に家庭内のパワーバランスは大きく偏り、夫は自分の意に沿わないことがあれば妻の使えるお金を制限することができます。たとえ暴力を受けたとしても、経済的に自立していなければ声を上げることも家を出ることも難しい状況に置かれます。彼女の母親にとって、それは「当たり前」のことでした。

しかし、ナーゲスの二人の姉は違いました。彼女たちは14歳と15歳という若さで結婚しており、いわゆる児童婚の当事者でもありました。それでも、そのような社会的な制約や困難がある中で、学び続けることを選びました。教育を通じて経済的自立の重要性を理解し、結婚後も仕事を続ける道を選びました。最初は周囲から理解されなかったそうですが、それでも働き続けたことで、自分の収入で自分を支えることができるようになりました。その結果、自分の意思を持ち、不満があれば声を上げることができるようになったといいます。経済的自立は、単にお金を得ることではなく、「自分の人生を選べる力」を持つことでもあります。

ナーゲスにとって姉の存在は大きなロールモデルであり、彼女は姉の姿を見て「女性にも力がある」と確信することができました。小さい頃から熱心に勉強をし、国を出てでも大学に進学することを決意しました。そしてその影響は家族全体にも広がり、かつては依存的な関係を当然と捉えていた母親も、今では娘たちの教育を誰よりも大切にするようになりました。女性が教育を受け、経済的に自立することの重要性を強く認識するようになったのです。

一人の女性の選択が家族の価値観を変え、次の世代の可能性を広げていきます。この話を聞きながら、五常が取り組む金融包摂の意味について改めて考えさせられました。金融包摂は単にお金にアクセスできるようになることではなく、これまで弱い立場に置かれてきた人、特に女性が自分の人生を自分で選ぶ力を持つことにつながります。そしてその変化は一人にとどまることなく、家族や友人、コミュニティ全体へと広がっていきます。ナーゲスの姉のような存在が増えていくことで人々の価値観は少しずつ変わり、ミクロな変化の積み重ねがやがてマクロな変化につながっていきます。

私は友人の話を聞いて、その連鎖を実感しました。同時に、「物語を語ること」の持つ力についても強く印象に残りました。ナーゲスは自分や姉の物語を語ることに責任と誇りを感じていると話してくれました。そのストーリーがまた別の誰かのロールモデルになる可能性があるからです。五常のインターンとして、このような現場の声や一人ひとりのストーリーに触れることで、金融包摂の持つ意味をより具体的に、そして実感を伴って理解することができました。小さな変化は一人の選択から始まり、それは確実に次の誰かへとつながっていきます。その積み重ねこそが、社会を変えていく力になるのだと感じています。

国際女性デー・イベントでトークを終えたナーゲス(中央)と友人たち / 星野亜希

 

星野亜希
Corporate Planning Intern