July 31, 2025

Purpose, Principle, Progress: リザンスが語るSejayaのビジョン

五常のスリランカのグループ会社、Sejaya Micro Credit LimitedのCEOリザンス・フランシスに、スリランカのマイクロファイナンスの実情とSejayaの取り組み、リザンスのキャリアとリーダーシップについて聞きました。(聞き手:アーリア・ムラリ)

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リザンスさん、本日はお時間をいただきありがとうございます。まず、これまでのキャリアと、どのようにしてマイクロファイナンス業界に入ったのかを簡単に教えてください。

リザンス: この業界に入る前、漠然と自分はNGOで働くのではないかと思っていました。卒業後、しばらく海外で働きましたが、2005年の津波の後、スリランカに戻り、マイクロファイナンス業界での就職機会を見つけました。それ以来、マイクロファイナンスに携わっています。この分野は大変なことも沢山ありますが、同時に本当に面白いと感じています。

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この分野で約20年間活躍されているのですね。その間、スリランカにおけるマイクロファイナンス業界はどのように変化したのでしょうか。

リザンス: 10年、15年前を振り返ると、マイクロファイナンス業界はもっとシンプルでした。プレイヤーは少なく、ほとんどがNGOか協同組合で、過剰債務や悪質な金融事業者による被害も聞きませんでした。しかし、業界が成長し、利益が期待されるようになると金融事業者はこれをブルーオーシャン市場と見なしました。残念ながら、多くの事業者が顧客保護への十分な考慮なしに参入し、業界は飽和状態になりました。2016年から2017年頃は業界にとって最も難しい時代でした。政治的な動機から、一部の政治家は債務免除を推進し、これが業界をひどく混乱させました。

過去10年間、スリランカは経済の低迷、COVID-19パンデミック、深刻な金融危機など、一連の経済的ショックにも直面しました。これらの出来事により、金融業界は弱体化し高い貸倒率につながりました。伝統的な銀行がリスクを回避するようになるにつれて、特に銀行へのアクセスが限られている農村部で、マイクロファイナンス機関がそのギャップを埋め始めました。低所得者や中小零細事業者向けに小口融資、貯蓄、金融リテラシー教育の提供を開始したのです。この取り組みは、銀行サービスを受けることが困難な層を支え、GDPの成長と経済の安定化に貢献しました。この困難な時期を乗り越えるためにマイクロファイナンス機関の存在は不可欠でした。

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マイクロファイナンス業界がどのように変化し、社会的に弱い立場の人々をどのように支援するようになったかよくわかりました。これほど多くの貸し手が許認可を受けずに事業を行っている中、中央銀行認可の4つのマイクロファイナンス機関のひとつであることはSejayaの活動にどのような影響を与えていますか。また、顧客が複数の貸し手から借入を行っている可能性がある中で、顧客保護の観点からどのような対応をしていますか。

リザンス:それは非常に重要な点ですね。中央銀行の認可を受けていることは、現場で強みになります。顧客に信頼されるのです。顧客は、私たちがガイドラインに従い、責任あるサービスを提供するという安心感があるため、認可を受けていない貸し手との差別化になります。

しかし、その信頼があっても、スリランカのような市場では顧客保護は想像以上に困難です。非常に多くの貸し手が許認可なく活動しており、顧客は複数の事業者から借り入れを行うことができます。差し迫った現金のニーズを満たすために、11もの異なる貸し手から借り入れをしている顧客もいました。60%の金利で借り入れを行う顧客もいます。それが唯一の選択肢だからです。

Sejayaでは、このリスクを非常に真剣に受け止めています。私たちが直面していた最大の課題のひとつは、顧客の信用履歴を確認できる信用情報機関がなかったことです。しかし、中央銀行と財務省に積極的に働きかけた結果、これを利用できることになり、今年度中に与信審査プロセスに信用情報機関による確認を組み込む予定です。Sejayaのローンオフィサーは、顧客自身からだけでなく、グループローンのリーダーやメンバーからも情報を収集することで、徹底した信用調査を行うように訓練されています。インフォーマルなやり方ですが、責任ある融資審査に役立ちます。

顧客が必要な金融サービスにアクセスできると同時に、過剰債務に陥るのを防ぐことが非常に重要です。

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それは深刻な問題ですね。完全にそのようなリスクをコントロールするのは難しそうです。さまざまな困難がある中で、何か楽しみなこと、希望を与えてくれるような取り組みはありますか。

リザンス:はい、Pasioには本当にワクワクしています。これは素晴らしいツールで、顧客にとっても事業を伸ばすチャンスだと思います。Pasioプログラムを通じて、18歳から35歳までの若手起業家に事業性ローンを提供するとともに、ビジネススキルやデジタルリテラシー研修も行っています。オンラインプラットフォーム上で顧客がデジタルストアを作成し、商品をオンラインで販売することができます。

特筆すべきなのは、Pasio顧客の約90%が女性で多くの方々にとってこれが初めてのデジタル金融サービスの利用であることです。これはデジタル金融包摂に向けて大きな一歩だと感じています。

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Pasio以外にも、Sejayaがサービス向上のためにテクノロジーを活用している取り組みはありますか。また、今後数年間でマイクロファイナンス市場はどのような方向に向かうと思いますか。

リザンス: はい、顧客用アプリも提供しています。融資の詳細や返済スケジュールを確認できます。シンプルなツールですが、自分の資金状況を把握して管理する上で大きな助けになります。今後はこのアプリの機能をさらに拡充し、より便利なものにしていく予定です。

将来を見据えると、スリランカのマイクロファイナンス市場はさらにテクノロジー主導の方向に進むと考えています。モバイルアプリ、デジタルウォレット、オンラインでの融資申請や処理が広がり、利便性向上と効率化のために返済額の回収もデジタルで行う事業者が増えていくと思います。

Sejayaもテクノロジーを活用したソリューションを積極的に取り入れることで、マイクロファイナンス分野で強いプレイヤーになることを目指しています。この取り組みの一環として、通信事業者やテクノロジーソリューション会社と積極的に提携を模索しています。個人的にも、このチャンスに非常にワクワクしています。

Pasio顧客とリザンス / 慎 泰俊

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Sejayaがローカルコミュニティの価値観を大切にしながら、イノベーションを取り入れている話を聞くことができ、大変興味深かったです。最後に少し個人的な質問で締めくくりたいと思います。長年マイクロファイナンスの分野で活躍されてきて、ご自身をプロフェッショナル、またはリーダーとして簡潔に表すとしたら、どのように表現しますか。

リザンス: シンプルに言うなら、私は 「インパクト志向のマイクロファイナンス実践者」 だと思っています。社会的インパクトと財務的持続可能性は常に両立させなければならないと強く信じています。財務的に強くなければ、社会的目標を達成することはできません。それは2つの車輪のようなもので、両方が一緒に動く必要があります。

それに加えて、私は「CEO」という役割を新しく定義しています。私にとってのCEOは Chief Encouraging Officerです。人々を励まし、挑戦させ、可能性を引き出し、成功を支えることが私の役割だと思っています。これまでのキャリアでさまざまなことを経験し、国際的な場でも働き、自分に何ができるかを知ることができました。しかし、ここSejayaで、これまでできなかったことに挑戦したいのです。他の人が進めるように道を切り拓く存在、それが今の私が目指すリーダーシップのあり方です。

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素晴らしいですね。リザンスさんの哲学である、他者のために道を切り拓く、ということが、顧客保護やPasioなどの取り組みに現れていると感じます。Sejayaのミッションである「誰ひとり取り残さない」とも共鳴する考え方ですね。本日は貴重なお話をありがとうございました。


リザンス・フランシス
五常のスリランカのグループ会社であるSejaya Micro Credit LimitedのCEO。マイクロファイナンス業界で17年、経営幹部職で8年の経験があり、そのうち2年間はCEOを務める。経営学の学士号と修士号を取得。事業立ち上げ、赤字部門の再建、ビジネスプロセス策定、製品およびビジネス開発、デジタルファイナンス、助成金管理、リスクマネジメント、総務の専門家。

June 28, 2025

Pasioのショート動画を公開──農村部の若き起業家たちの挑戦

Pasioは融資とビジネススキルの教育機会を提供若手起業家に提供するプログラムであり、インド、スリランカ、カンボジアにおいて、これまでに数千人の若手起業家に資金、デジタルツール、ビジネストレーニングを提供してきました。

Pasioは、2025年3月末時点で、農業、小売、園芸などの領域で小希望事業を営む若手起業家に対して90,000件以上の融資を提供しています。また、現地の言語に対応したPasioのモバイルアプリも13,000回以上ダウンロードされており、融資を管理したり、緊急時に資金にアクセスすることが簡単にできるようになっています。さらに、21,000以上のオンラインショップを通じて、若手起業家たちは自分のビジネスについて発信し、地元以外の顧客にも商品を届けられるようになりました。Pasioのコミュニティには展開している3か国の合計で14,000人以上の若者たちが参加し、仲間とつながって、共に学び成長しています。

金融包摂と若者のエンパワーメントの一環として、Pasioはインド、スリランカ、カンボジアの農村部で活躍する若手起業家たちの日常を描いたショート動画を公開しました。この映像では、若者たちが少額融資やデジタルツール、ビジネストレーニングを活用しながら、を立ち上げている様子をご覧いただけます。

このショート動画は、大げさなサクセスストーリーではなく、日々の困難に向き合いながら、自分らしいやり方で自信を育み、事業を着実に成長させていく若者たちの姿を映しています。

この動画を通して、農村部に暮らす若者たちの声を届け、そのたくましさや発想力、秘められた可能性に、より多くの人々の関心が集まることを願っています。

現場の声

動画で紹介されているストーリーの一部をご紹介します。

[インド] – Hasumatiben, 美容師 
グジャラート州ダホードに住む35歳の美容師、ハスマティベンさんは、小さなサロンを営みながら家族を支えています。Pasioを知ったのは、Prayas Financial Services Pvt Ltdの支店での融資を受ける際、Pasioの担当者からオンラインショップやWhatsAppコミュニティについて紹介されたのがきっかけでした。好奇心からグループに参加し、マーケティングや店舗運営の改善に関する情報を積極的に活用するようになりました。これらの知識をもとに徐々に顧客基盤を広げ、今ではより自信をもって事業を運営しています。ハスマティベンさんは「Pasioはスキル以上のものを与えてくれた。それは“進むべき道”を教えてくれたこと」と語ります。現在は自らも学びを実践しながら、同じような道を志す地域の仲間たちにPasioをすすめています。

[スリランカ] – Charuka, 園芸ショップオーナー
28歳のチャルカさんはスリランカ、ラガラ出身の起業家です。彼女は喫茶店を経営し、ビニールハウスでチリを栽培し、苗床を管理するなど、多様な事業に取り組んでいます。最近では「Modern Agribusiness and Tea Shop」というブランド名でガソリンの販売も始めました。しかし、彼女の道のりは決して順風満帆ではありませんでした。かつては保険会社に勤務していたものの、病気のために退職せざるを得ませんでした。その後は妹の学費の負担も重なり、経済的に大きな不安を抱えるようになりました。そんな中、Sejaya Micro Credit Ltdからの少額融資がきっかけで、母親と共に喫茶店を開業。その後、Pasioを通じて2回目の融資を受け、苗床の再建やビニールハウスへの投資、店舗への電力供給を実現しました。こうした変化によって、チャルカさんの生活は安定し、収入も3倍に増加しました。彼女は、自身の未来を切り拓くだけでなく、地域の若い農業起業家にとっての新しい可能性を示したのです。

[カンボジア] – Ry Sothea, コーヒースタンドオーナー 
カンボジアのシェムリアップにあるバイヨン寺院の古代の石像のすぐそばで、35歳のライ・ソテアさんは、コーヒースタンドを営んでいます。寺院の職員やトゥクトゥク運転手、観光客の人気を集めています。長年、メニューを拡充したり設備を改善したりしたいと考えていましたが、フォーマルな融資へのアクセスがないため、その夢を実現できませんでした。そんな中、2023年にMAXIMA Microfinance Plcを通じてPasioに参加し、小規模事業者向けの融資を受けました。その資金で新たな機材を購入し、若者に人気のコールドブリューやフレーバーコーヒーを導入しました。売上は日々伸び、ソテアさんはすぐに最初の融資を完済し、次の成長のために新たな融資を受けました。現在は小さなカフェを開くために貯金を始めており、いずれは姪に事業を引き継ぎたいと話します。古代遺跡の影の下でも、夢は着実に育まれているのです。

これらのストーリーは、Pasioを活用して自分らしいやり方で一歩一歩前進する起業家たちの決意を物語っています。

Pasioについて
Pasioは、Gojo & Company, Inc. とEducation Above All Foundation(EAA)のパートナーシップによって生まれたグローバルな取り組みです。18~35歳の若手起業家を対象に、ビジネススキルの教育機会を組み合わせた事業向けローンや、オンライン上のコミュニティプラットフォームをはじめとしたデジタルツールを提供します。現在、カンボジア、インド及びスリランカの五常グループの会社(Prayas Financial Services Pvt Ltd、Sejaya Micro Credit Ltd、MAXIMA Microfinance Plc)を通じて展開されています。デジタルリテラシーの向上にも力を入れており、若手起業家が力を発揮し、持続可能な生計を確立し、地域社会にポジティブな変化をもたらすことができる包摂的なエコシステムの構築を目指しています。

詳細はこちらをご覧ください。

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